2009年9月7日
アルジェリア駐箚特命全権大使
神谷 武(かみたに たけし)
昨年12月14日、アルジェリアに着任、冬のアルジェは、曇天で、うすら寒く、激しい渋滞の中、大使公邸に到着しました。春から夏には晴天日が多く、青い空と海、緑の木々に白い町が映え、また、月夜が楽しめます。アルジェリアの国土は、地中海沿岸からアトラス山系の山岳地帯を越え、南のサハラ砂漠に大きく拡がっています。ユネスコの世界遺産は7カ所、砂漠の中の新石器時代の遺跡、古代ローマ、イスラム帝国等々、諸民族の興亡の跡が見られ、多様な文化遺産が現代に息づく国です。
本年1月4日、ブーテフリカ大統領に信任状を捧呈し、正式に任務に就きました。アルジェリアは、1990年代のテロの時代を脱し、近年、政治経済状況は、安定化し、日本としても、この国との関係の再構築を行っていく段階にあります。
信任状捧呈(1月4日)
着任レセプション(1月28日)
昨年11月、日本経団連のミッションがアルジェリアを来訪し、第6回合同経済委が開催されました。近年、東西高速道路、LPG・LNGプラント、化学肥料製造プラントなど、日本企業による大型プロジェクトの受注が続いています。1970年代、80年代には、石油・天然ガス開発関連分野を中心に両国の経済関係は、進展し、在留邦人は、2000人前後で、3000人を超える時期もあったと聞いていますが、テロの時代の関係停滞を経て、この10年、在留邦人数は、漸増、現在900人余となっています。本年6月、橋本聖子外務副大臣がアルジェリアを来訪してメデルチ・アルジェリア外相との会談を行うなど、両国の一層の関係の進展が期待される状況にあります。
橋本外務副大臣来訪(6月22日)
アルジェリアは、日本には、持続的な対等な関係の発展、技術面での協力を期待するとしています。協力関係増進のためには、交流による相互理解の増進、実務面での行政的、技術的な問題の解決などが必要と考えられますが、友好関係の一層の増進は、日本としても、望むところでありましょう。
アルジェリアでは、本年4月の大統領選挙により、ブーテフリカ大統領が3期目に入りました。1999年に初めて同大統領が就任して以来、国民和解とテロ掃討作戦強化により、治安の安定が図られ、経済振興計画、民営化、金融・教育・司法の改革が推進され、また、国際的には、テロとの戦いを通じて、更には、石油・天然ガスの主要供給国として、欧米諸国との関係の好転が窺えます。
経済指標を見ると、2008年には、一人当たりGDP4681ドル、成長率2.4%、インフレ率4.5%、失業率11.3%、貿易黒字406億ドル、外貨準備1431億ドル、対外債務残高56億ドルとなっています。対外債務累積問題は、解消し、石油価格高騰を背景に、マクロ経済は、堅調であります。
しかし、石油・天然ガスなど炭化水素関連が、輸出の97%、財政収入の78%、GDPの45%を占めており、脱炭化水素、経済の多様化が重要な政策目標となっています。インフラ整備、中小企業、農業、観光の振興、また、雇用促進が課題とされています。日本からの投資や技術協力が期待されている所以でもあります。昨年来の金融危機に端を発する世界的な景気後退、石油価格の下落・不安定化を受け、国内産業の振興に一層力点が置かれると共に、外資規制、輸入制限的措置も取られるに至っています。
対外経済面では、EU(仏、伊など)、米国等との関係が大宗を占めていますが、近年、アジア諸国との関係、特に中国との関係の伸長が顕著となっています。アフリカ諸国、アラブ諸国との間には、地域的な繋がりがあり、また、非同盟諸国との間には、歴史的な繋がりが強く感じられます。
桜と平成の源氏物語展開会(5月2日)、
以上のような状況の下で、日本としては、アルジェリアとの協力関係の増進に取り組んで行かねばなりません。技術協力の実施促進、投資協定締結交渉の開始、各種文化行事の開催など様々な分野での協力を図ろうとしています。このためには、政府首脳・閣僚間の政治レベルでの交流を始めとして、より積極的な外交を推進していく必要があり、日本の官民の一層の連携が重要と考えられます。
今後とも関係各位の御支援を宜しくお願いしたいと存ずる次第であります。