ニュース
アルジェリア国内ニュース
読み物
日本とアルジェリア
人物往来
出来事
私とアルジェリア
私と日本
紹介
論文
センター概要
アルジェリア大使館関連
アルジェリア関連リンク
お問合せ

ニュース

二国間関係
多様な分野での日本・アルジェリア間の協力関係を

タハール・デバガ(Slim Tahar Debagha)
前駐日アルジェリア大使(1992〜1997年)

 

 アルジェリアが独立を達成した2年後の1964年、わが国はマグレブ(北アフリカ)諸国のなかでいち早く日本と外交関係を樹立した。これはアルジェリアが何よりもアジア諸国、なかでも日本との経済関係の重要さを認識していたからである。独立以降現在に至るまでアジア諸国のなかで日本はアルジェリアにとって最大の経済的パートナーとなっており、両国の経済関係はきわめて恵まれた条件のもとに置かれている。


  まず何よりも、過去から現在に至るまで両国は何ら憂うような事態を経験していないからである。またアルジェリア人のみならず多くの第三世界諸国の人々は、日本に対して親近感を抱いており、アラブ人やイスラム教徒もオリエンタルではないのか?という日本と共有することのできる文化的価値観を抱いている。そして何よりも日の出る国として驚異的ともいえる経済発展を成し遂げた日本との経済的協力関係を築くことを望み、日本の豊かな経験から多くのことを学びたいと思っている。


  われわれは、豊かな人的資源(高い技術水準、労働を尊び言行一致を遵守する優れた文化的価値観)を持っている日本の政府ならびに民間金融機関による信用供与、先端工業技術移転を期待している。


  他方、アルジェリアは豊富な地下天然資源を持っているのみならず、低廉でしかも技術水準の高い労働力が豊富に存在しており、これを活用することにより膨大な市場を開発することが可能となる。さらにアルジェリアの財政政策はきわめて健全であり国際機関からも高い評価を得ている。
1962年における両国間の貿易取引総額は260万ドルにしか過ぎなかったが、2000年には3億ドルに達している。60年代前半、アルジェリアが日本から輸入していた商品は軽工業品(繊維製品、オートバイ等)、静岡の有名な緑茶であり、アルジェリアは日本に皮革、亜鉛、水銀等を輸出していた。70年代になると日本の主力輸出品は、石油・天然ガス開発のための資材機器、セメント、自動車であった。アルジェリアの日本向け輸出は炭化水素であった。


  長期間にわたりアルジェリアは、日本輸出入銀行にとって第5位の信用供与国の地位にあり、北アフリカ諸国と日本の貿易取引総額の約80%を占めていた。


  だが日本・アルジェリア間貿易は、恒常的に日本の輸出超であり、2000年度の日本の貿易黒字は2560億ドルに達している。しかしも日本政府のアルジェリアに対する経済援助額は、わが国と経済関係を取り結んでいる他の諸国と比較してきわめて少ない。1998年3月31日、日本政府はアルジェリアに、188億円の信用供与を行った。この額は現在の価値に換算すると1億5600万ドルであり、このうち140億円が電信電話網建設プロジェクトに充てられる。これが、アルジェリアが独立してから今日に至るまでに日本政府がアルジェリアに供与した唯一の政府間借款供与である。


  おそらく日本の投資家がアルジェリアの治安状態を懸念しているせいかも知れないが、長期間にわたって両国間の協力関係を培うはずの日本のアルジェリアに対する直接投資には見るべきものがない。だがアルジェリアの治安状態は目に見えて改善されており、治安状態が日本からの直接投資を妨げている主要な要因であるとは思えない。アルジェリアの比ではない危険に満ち溢れている地域では、資本逃避が見受けられないのは何故かわからない…。


  現在アルジェリアでは投資法が改定され、経済の自由化が図られており、経済は活況を呈している。2002年度の政府予算(2001年1月1日〜12月31日)は対前年度予算の5.7%増であり、財政状態はきわめて健全である。わが国の外貨保有は2000年度末には117億ドルであったが、2001年10月には177億ドルに達している。また対外累積債務総額は2000年度には252億ドルであったが、2001年度には約10%減の225億ドルへと低下している。


  こうしたなかアルジェリアに平和が戻った現在、かねてからの民営化政策も具体化しつつあり、2000年11月にアルジェリで開催された日本・アルジェリア経済委員会で決議された様々な分野での経済協力関係も再び活性化する兆しをみせている。


  日本からの直接投資は両国間関係の経済協力を進化させていく上において大きな役割りを果たすものと確信しているが、国際協力銀行による協力も不可欠な要素となっている。例えば大気汚染問題を解決した日本の経験を生かした環境汚染プロジェクトへの融資、さらには海水の淡水化プロジェクトへの融資が切望される。


  無論経済分野における協力関係だけではない。文化、技術の分野においても様々な交流を深めなければならないと考えており、省庁レベルにおいても交渉を開始している。両国の文化・技術分野における交流は1990年代の初めに停止したままになっており、これを再起動しなければならないと考える。

 Last but not least. かかる意味において、ジャパン・センター・フォー・アルジェリアの活動はきわめて意義深く、しかも両国関係の親善・友好関係を深め、日ア双方におけるコミュニケーションを図っていく上において重要な役割りを担っているものと考える。


訳:福田邦夫(明治大学教授)