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映画「最初の人間」一般公開について

高倍 宣義

 2013年のカミュ生誕100年を記念する映画「最初の人間」原題“Le Premier Homme”が、12月15日(土)より岩波ホール他全国で順次公開されます。

 原作は、アルベール・カミュ(1913-1960)が、1960年1月6日にパリ郊外で交通事故により亡くなった時、見つかった自伝的小説で、没後34年の沈黙を経て1994年に出版されました。

 映画化したのは、カミュと同じような環境で育った「家の鍵」のイタリア人監督ジャンニ・アメリオです。

 物語は、フランスに住む作家ジャック・コルムリが、ブルターニュの仏軍墓地に眠る父の墓を訪ねた後、年老いた母が一人暮らすアルジェを訪ねるところから始まります。アルジェリアは作家の生まれ育った土地ですが、独立を激しく望むアルジェリア人と海外領アルジェリアを軍隊で守ろうとするフランスとの間ですでに戦争状態でした。

 作品から大きなテーマが3つ感じられます。第1は、作家となった主人公が自己を「最初の人間」と認識して、誕生、父親、少年時代の家族、学校、友人を回想し追求すること。第2は、激化するフランスとアルジェリアの対立について、アルジェリアに生まれ育った者として「アラブ人とフランス人の共存できる可能性を信じる」との立場を明らかにすること。第3は、権威的な祖母が厳しいお仕置きを息子にするのを耐えていた母への愛です。それはラジオで、「アラブ人に告ぐ。私は君たちを守ろう、母を敵としない限りは…。もし母を傷つけたら私は君たちの敵だ」との呼びかけに込められています。

 アルジェリアは1830年から1962年までフランスにより植民地化され、100万人のフランス人等が生活していました。カミュは祖父母の代からアルジェリア入植者であり、アルジェリアが生まれ故郷です。アルジェリア人との共存を信じるカミュは、戦争について過激な左右両派の板挟みになり沈黙しました。

 作品は、「アルジェの戦い」(66年)、「異邦人」(68年、原作カミュ)と同じく、イタリア・アルジェリア・(フランス)の合作です。

 最近のアルジェリアをテーマにした映画に、「いのちの戦場-アルジェリア1959」(09年)、「神々と男たち」(11年)、「フランス特殊部隊GIGN~エールフランス8969便ハイジャック事件~」(11年)がありますが、いずれもフランス単独の制作です。


   公式ホームページ http://www.zaziefilms.com/ningen/ 原作「最初の人間」新潮文庫