ニュース
アルジェリア国内ニュース
読み物
日本とアルジェリア
人物往来
出来事
私とアルジェリア
私と日本
紹介
論文
センター概要
アルジェリア大使館関連
アルジェリア関連リンク
お問合せ

ニュース

日本訪問記

スリマン シェイク
<編集部注: Slimane CHIKH 氏の略歴等についてはJOURNAL 1 参照。 同氏はアルジェリアを代表するアルジェのバルドー美術館友の会の会長も勤めている。 この程、駐エジプトアルジェリア大使に任命され、近く赴任の予定。ご活躍をお祈りする。>

日本・アルジェリアセンターの機関紙に、マグレブ「日の落ちる国」から「日の昇る国」への訪問者として私の訪問印象記を投稿できることはとても大きな喜びです。

外務省により作成された内容豊かなプログラムのおかげで10日間(2001年7月9日―19日)実り多い日本滞在を体験することができました。まずは、私がお会いしたすべての関係者が示してくれた暖かいホスピタリティに心からの感謝の意を表します。 皆さんは貴重な時間を割き、私が日本について、日本国民が達成した進歩について多くのことを学ぶうえでの情報を惜しむことなく提供してくれました。

私に日本という国にいることを感じさせた最初の取り掛かり口は東京でした。都市としての機能、昼夜を問わずの活気、左側運転、丹下健三氏の設計になる東京都庁の大胆な建物。しかし、窓やバルコニーの洗濯物という見慣れた光景もありました。東京には、明治維新とともに19世紀にスタートした近代化の長い歩みを経験した日本という大国の首府にふさわしいたたずまいがありました。

 

日本の魂とは、人々の自然で芳しい礼儀正しさ、洗練された料理、能や歌舞伎といった伝統芸能などに宿っています。名古屋ではお能、東京では歌舞伎を見る機会に恵まれました。 また、この魂は、神社仏閣など宗教的儀式を行う場所の荘厳さの中にもありました。

ユネスコによって世界遺産に指定され、6世紀に建立された建築史上の芸術品、法隆寺にもこの魂はみられ、それは仏教と神道の精神性をもとに倫理観と美的感覚をもって日本人の天才的な創造力が発揮されたもに他ならないと感じました。 私はこの由緒あるお寺をたずね、そこにある美しい仏像をはじめ、回廊に飾られたさまざまな宝物を鑑賞しました。このような希少な品々の価値はまさに評価することが不可能です。

私が奈良を訪れたとき見た東大寺は、その2世紀後に建てられ、そのプロポーションからみても建築的観点からその時代の中でもすばらしいものであることを感じました。 また、封建時代の戦国武士の富の象徴であった2つの豪華な鯱を屋根にかかげた名古屋城にも感激しました。 戦による破壊を免れた京都は日本の伝統的な都市整備のよさを保持し、国の重要文化財の全体の2割以上を宝として誇っています。

一方では、京都は茶道、華道といった伝統芸術の国家的的中心として認識されています。それは桂離宮を訪れたとき茶道の為に設けられた数多くの場所、そして美しく手入れされた庭を見ても再度確信しました。さらに桂離宮では日本庭園の天国のような情景を目の当たりにすることができました。木々や草花、土手や岩、橋や水の流れの作り方からなる、洗練性とファンタジーの細やかな交わりを通して自然の美しいシンフォニーを観て、感じることができました。

この財産は数多い国内の美術館、博物館の中にも実に丁寧に保管されています。見学することができた大阪の民族博物館での視聴覚技術の適切な使用方法は見事でした。 異なった文化の品々を展示し、日本の島国性を超越し、国際性ということをオープンに捉えようとする意志は称賛に値します。

民博を訪れたとき、展示場にアルジェリアの存在がほとんど無いことに実に悲しく思いました。なんと、ここにはアルジェリアの物が6点しかないとのことでした。アルジェのバルドー博物館や民族伝統博物館と実績のある協力体制を作るようアルジェリア側も努力して、この空白を埋める必要があります。

京都歴史博物館の修復研究所を訪れたときその作業に携わる技術者の方々の技能とプロ精神に感激いたしましたが、この研究所とも協力できるとよいと思います。仕事に対する態度そして良い仕事をしようとする取り組み方、これらは日本国民の美徳のひとつです。もう一つは時間厳守の精神。時間を制することは自らの国の運命を制する決め手と言われますが、この点からも日本はこのチャレンジに勝ったといえます。筑波、特に宇宙研究所と国立エネルギー研究所を訪れ、前記のことを更に確信しました。また、日本とアルジェリアが今後様々な分野で技術革新、研究を協力していく際、多岐にわたっての協力が可能であると思います。日本は21世紀の始めの今日の歴史の流れをさらにスピード・アップさせるモーターともいえる「知識の社会」を形成するリーダー国のひとつです。日本の外務省や文部・教育省の方々と話して感じたことは、この国の責任者達は知識と認識こそ来世紀に向かって整えておくべきだと確信していることでした。たとえば、教育制度の重要性などもこの考慮から生れるものと思います。アルジェリアでもこの問題は切実です。両国とも教師の質のレベルアップ、低学年への特別な配慮などが最大の関心事であり、その点からも意見交換が有意義だと考えます。

日本で行われているテレビでの放送教育の実験もアルジェリアは大いに参考にすべきです。NHK本部をおとずれ、様々な努力がなされていることを実感しました。同時に、全世界向けに放送しているワールド・ラジオ・ジャパンではアラビア語でインタビューを受け、メッセージを送ることができました。このラジオ放送を利用することによって、日本はさらに世界に広がることが可能になります。

この世界に向けた姿勢は、高等大学教育にも表れ、自国のレベルを世界のスタンダードに向上させ、国内だけでなく、国外でも通用する幹部を育成しようとしています。大学生活、一貫してよい成績をあげ、厳しい選抜をくぐりぬけなければならない状況に教育者側も心配していることがあります。それは、私立校が半数を占める数々の大学で学生の数が減ってきているということです。アルジェリアではまったく正反対の状況があり、増え続ける学生を受け入れることが不可能な状態です。 日本とアルジェリアの大学間の協力は当初は情報交換などをかねた学長レベルのコンタクトを通して、研究者、そして後には学生の相互受け入れなどの形で検討することができると思います。

私が会った方々の中のにはアルジェリアに関心を示してくださった方も多かったのでこのようなアクションは充分可能と考えます。日本アルジェリア協会が中東調査会で行った、アルジェリアのアフリカ政策に関する私の著書を紹介した講演後の質疑応答でも多くの関心を感じ取ることができました。 2005年に万博が開催される名古屋市は2001年度の民間大使にラムダニ・ザイラさんを選び、同年をアルジェリアの年と決定しました。 これは大勢の名古屋県民にアルジェリアをより良く知ってもらうとても良い機会です。

現在はとかく、日本アルジェリア両国関係を経済に限ってとらえる傾向があります。 しかし、私の考えでは、この協力関係は文化・学術分野に広げることによって、より長期的な人間的関係が深まり、お互いの距離を狭めることができると確信しています。

このためには、両国の博物館館長、芸術家、大学教授、研究者など協力に芸術的創造性と思考の進歩をもって魂をつぎ込んでくれる人々を通じて行い、文化の対話という有益で豊かになる方向に向けていくのが望ましいと感じています。

Ramdani Zahira ラムダニ ザイラさんの住所:
〒211-0035 神奈川県川崎市中原区井田1-22-19-2F
メールアドレス; zahiraram@hotmail.com